研究会レポート

鹿児島の特産品や作り手のこだわり等をレポートします

麹の秘めた力を学ぶ!

日時:平成26年2月15日(土)
場所:かごしま県民交流センター
講師:株式会社河内源一郎商店 代表取締役 池田隆一氏

○株式会社河内源一郎商店の歴史
河内源一郎が昭和6年に鹿児島市清水町にて種麹製造販売を創業。そのきっかけは広島県福山市出身で焼酎や味噌造りの指導に来鹿したことであった。そして焼酎用河内菌を発見した。
昭和28年に株式会社河内源一郎商店設立し,醸造用各種種麹および醸造用機器を製造販売。
平成8年に①麹を知ってもらいたい。②麹を使って素晴らしい食品ができることを知っていただきたい目的で「麹の館」設立し,麹加工食品を製造販売している。
 

○麹とは
麹という言葉に触れたのは3,4年前に塩麹が有名になったころではないか。実際「塩麹」は大分県佐伯市の糀屋本店の女将さん浅利妙峰さんが世に広められた。糀屋本舗は,麹を製造販売されていたが年々利用者が減ってきた。商売の立て直しのために塩麹を造り評判となり製品化された。麹を造るためには種麹が必要になる。種麹とは麹菌のことで正式には日本コウジカビというカビの一種で別名「国菌」と呼ばれている。大きく2つに分けられる。
①黄麹菌は,日本酒・味噌・食酢・甘酒に使用 ②黒麹菌や白麹菌は,焼酎などに使われています。
日本コウジカビは,日本独特のカビであり,高温多湿の日本の気候に合ったカビである。ヨーロッパ・アメリカでは地中海気候で乾燥し,湿度が少なく発育しない。東南アジア中国でもコウジカビは生えるがクモノスカビとか言われる菌糸の長いかびである。黄麹菌はみどり色。黒麹菌は黒い。白麹菌は黒麹の中に褐色の突然変異が現れ色は褐色だが白麹と呼ばれる。ところで「麹」とは,穀物に麹菌を接種し,繁殖させたもので材料により,米麹・麦麹・豆麹となり,種類によって用途が異なります。どうして穀物かというとでんぷん質がないと麹菌は発育しにくい。米麹は米を使ったもので40~42時間ででき,麦麹は24,5時間でできる。豆麹は,愛知の八丁味噌の原料として有名である。
【試食】

丸い方は黄麹を使っており甘酒を造るときに使う米麹。四角い方は黒・白麹で焼酎用に使い,すっぱい麹ができる。麹菌の種類の違いによって用途が異なる。
麹を知るためには麹・酵母・酵素の違いを理解しなければならない。
①麹「こうじ」:種々の酵素をつくりだす微生物
②酵母「こうぼ」:糖分をアルコールに変える微生物 例えば,焼酎酵母,ビール酵母などがある。
③酵素「こうそ」:原料のでん粉・タンパク質等を糖分・アミノ酸等に変える触媒の働きをする物質である
麹を利用するとは酵素を利用することに他ならない。酵素の種類は①でん粉をブドウ糖に変えるデンプン分解酵素(アミラーゼ)。わかりやすいもので言えば唾液お米を口の中でもぐもぐすると甘くなる。これは唾液中のアミラーゼの効果である。②タンパク質をアミノ酸に変えるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)③脂肪を脂肪酸・グリセリンに変える脂肪分解酵素(リパーゼ)が一般的に知られる3大消化酵素である。
麹を使わなくても酵素剤を使えば良い商品ができるのはないかと考えたとします。実際には麹を使ったときと同じような商品にはならない。実は麹が造る酵素は何百種類の酵素がつくられそれぞれの酵素がそれぞれの働きを持っており,麹を利用することによって美味しい商品が造られる。すなわち酵素を十分に利用するために出来の良い麹を造る事が大切です。酵素は熱に弱いのが一つの欠点です。麹を利用するとは酵素を利用することに他ならないのです。
○和食について
食に関する世界無形文化遺産としては,フランス料理・地中海料理・トルコ料理・メキシコ料理がすでに指定されていたが,昨年12月にあらたに和食も認定された。
和食の原点 おみそしょうゆ酢,漬物など優れた発酵食品は麹がないと造れない。発酵食品は①昔から造られており安全である。②添加物が必要ない。③調和のとれた風味(時間をかけて酵素が働く)④機能性がある。などで優れている。
○味噌について
鹿児島の味噌は,麦麹。本州では米麹が一般的に使われる。原料は麦麹もしくは米麹・大豆・塩。

【試食】
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テーブルの上の味噌 色の濃い味噌(源流)は1年程熟成したもので,旨み成分のグルタミン酸の割合がアミノ酸総量の17%。薄い味噌(若味噌)は2~3カ月ねかせたものでグルタミン酸の割合は13%。熟成させるとグルタミン酸の割合が増える。糖分はあまり変わらない。鹿児島は甘い味噌が多い。旨い味噌とはグルタミン酸が多い。河内源一郎商店の味噌は通常,大豆は麦の3~4割で塩分は10%以下。市販品は12% 糖分は22~23%程度である。販売されている味噌の比較はなかなかできないが,自分で味噌を造るときに,造り分けができる。甘い味噌を造るときは大豆の割合を1/4程度に減らし,麹を増やす。麹が多いと早く食べられる。旨い味噌を造る時には,大豆を1/3に増やす。ただし熟成に時間がかかる。
○味噌の効用
色の濃い味噌は,メラノイジンという物質が含まれ動脈硬化などに効果があると言われている。また,大豆由来のイソフラボンが含まれ,女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをすると言われる。機能性の高い食品であるのでぜひ毎朝一杯の味噌汁を飲んでほしい。
○甘酒について
甘酒は原料として米麹・米・水である。甘くておいしい。砂糖類は入っていない。
甘酒は飲む点滴といわれ,病院での点滴と似たような成分であり,吸収されやすいブドウ糖やビタミンB1・B2・B16,オリゴ糖などが含まれ,栄養価の高い食品であり,免疫効果を高めるはたらきがある。
【質問】
甘酒はいつ飲むか。会場内の方は冬が多い。
甘酒は元来,夏の飲み物であり,夏の季語となっている。夏バテ防止に甘酒を飲んでいた。江戸時代の飛脚も飲んでいた。なお,甘酒にはアルコールは入っていない。河内源一郎商店では甘酒専用の米麹を作って甘酒をつくっている。
○塩麹について
塩麹の原料は米麹・塩・水である。酵素の働きによりタンパク質がアミノ酸に分解され,肉が柔らかくなる。相性がいいのは鶏肉である。時間がたっても硬くならない。塩麹を熱殺菌をすると塩麹でなくなる。酵素は熱に弱いので酵素がほとんど働かない。冷蔵で販売されている塩麹は,おそらく熱殺菌されていない。一方,常温販売の物は①熱殺菌されている。②アルコールが入っており保存 ③塩分濃度が高い(15%~18%)。この濃度では保存は効くが酵素は働きにくい。


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以上が長文ではありますが要約です。誤表記や要約ミスがあるかもしれません。随時修正します。今回参加いただいた方 ありがとうございました。希望されていたにも関わらず,定員オーバーや所要で参加できなかった方大変申し訳ありませんでした。(記事:海老原純一)

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