春の恒例行事「酒ずし」作りが会のメンバーでもある東酒造さんで、行われました。
鹿児島を代表する郷土料理の「酒ずし」は 江戸時代からの歴史を持つといわれています。
島津の殿様が 花見の宴会の後に残ったごちそうと酒を一緒にして桶に入れておいたところ 翌日発酵して良い香りを放つ料理になっていたのがはじまりだといわれています。
東酒造さんでは 春、杜氏がその年の酒造りを終えて故郷に帰るときにこの酒ずしをこしらえて 労をねぎらって皆で食べる「ハレ」の料理として受け継がれているそうです。
灰持酒をまぶしたご飯に、海の幸、山の幸、春の食材など層にして重ね 半日ほど重石をのせた押しずしのようなもの。
ひとつひとつの食材を丁寧に下ごしらえをし、時間をかけて作る「酒ずし」は究極のおもてなし料理でもあります。
東酒造さんの厨房で 福元万喜子社長から丁寧に教えていただきながら 皆で賑やかに酒ずし造りが行われました
といっても・・・ 万喜子さんが前日に買い物から味付けまでほとんど終わらせてくださっていたので 私たちは具材を切るだけでした
タカ海老、イカ、たけのこ、つわ、椎茸、つけ揚げ、こが焼きなどなど具沢山
と酒を入れて硬めに炊いたご飯はしっかりと冷まし 塩を加えた酒をじゃぶじゃぶになるほど加えて混ぜ合わせます
この時に使う酒は「灰持酒(あくもちざけ)」といって、鹿児島の風土に根付くお酒です
酒とみりんのいいところ取りの万能調味料で、私も愛好者の一人です
東酒造さんでは「高砂の峰」と「黒酒」の2種類の灰持酒を造っています
今回はお値段もいい「黒酒」を使用しました
昔は、米1升に酒1升だったそうですが、今は少し控えめで米の8割ほど・・・
すし桶は豪華な琉球塗りです。これが食卓に登場すれば、気持ちも上がっちゃいますね。
桶の底に清め塩をふり、ご飯と具材を重ねていきます。
1段目は山の幸、2段目は練り物と三つ葉、3段目に海の幸。
表面には彩のいい薄焼き卵やエビ、イカ、たけのこの穂先、木の芽を飾ります。
最後に葉らんを敷くのですが、 裏面を上にして置くと葉脈の筋がさけ寿司に付かない という細かい心配りまで教えていただきました。
ひとつひとつの気遣いに、思わずホッと笑顔になってしまいます。
そんな女性でありたいな、とも思わせてくれた酒ずし作りでした。
蓋をしてその上に重石を置いておよそ6時間 桶の上端ぎりぎりに酒が上がってくる状態をキープするために時間の経過とともに重石をどんどん重くしていきます。
その日の気温、発酵時間、重石の加減で仕上がりも違ってきます。 出来上がるまでドキドキだと万喜子さんがおっしゃっていました。
これまで何度となく作ってらっしゃる万喜子さんでもそうなのですね。
6時間ほどで食べ頃です。 しゃもじで縦に切るようにして分け、桶の空いた所で混ぜ合わせます。
層にしても結局は混ぜてしまうのだから、最初から混ぜ寿司でいいのでは? との質問もありましたが 実は、万喜子さんも同じことを考えたらしく 層にせずに作ったことがあるんだそうです。
全く美味しくなかったそうな・・・
もてなしの心は料理の仕上がりまでも変えてしまうのでしょうね。
ますます酒すしのファンになってしまいます。
その夜、メンバーと共に美味しくいただきました。
と具材の旨味をたっぷり吸いこんだご飯は 芳醇な香りと共に口いっぱいにおいしさが広がります。
2日目、3日目と発酵が進むにつれて触感も味も変わってきます。 4日目が一番美味しかった!というツワモノも現れるほど・・・
ご高齢の方でも、食欲がないとき 酒ずしなら食べることができるという話もお聞きしました。 食べる点滴ですね。
前日に下ごしらえをしていただき 皆で分担しながら作った酒ずしは格別の味でしたが 全ての工程を一人で行ったわけではないので 近いうちに我が家でもチャレンジしてみたいと思っています。
切なすし桶もお借りしてきました。
我が家のハレのおもてなし料理として娘にも伝えていきたい郷土料理です。